前の記事で整理した通り、クラウドとは ITの使い方の考え方 でした。
では次に出てくる問いは、自然とこれです。
その考え方を、実際に使える形にしたものは何か?
その代表例の一つが、Amazon Web Services です。
ここからは、クラウドという思想を AWSがどう実装しているのか を整理します。
AWSは「完成したシステム」ではない
まず、最初に外しておきたい誤解があります。
AWSを使えば、それだけでシステムが完成する
これは違います。
AWSは、
- 業務システム
- アプリケーション
- 会社の仕組み
といった 完成品 を提供するサービスではありません。
AWSの正体は「ITインフラ部品の集合体」
AWSが提供しているのは、
- サーバーを動かすための基盤
- データを保存する仕組み
- ネットワークをつなぐ機能
- セキュリティの土台
といった、ITシステムを作るための部品(インフラ機能)です。
つまりAWSは、
完成品ではなく、ITインフラの部品が集まった巨大な倉庫
のような存在。
どう組み合わせるかは、使う側が決める。

なぜAWSは「組み合わせ前提」なのか
AWSが分かりにくく感じる最大の理由が、この組み合わせ前提という思想です。
AWSは、
- これを入れれば完成
- 標準構成はこれ
という設計をしていません。
代わりに、必要な部品を必要な分だけ自由に組み合わせるという前提で作られています。
その結果、
- 業種や規模を問わず使える
- 変化に強い
一方で、
- 全体像が見えにくい
- 初見では難しく感じる
という特徴が生まれます。

AWSが「提供しているもの」
ここで一度、AWSがやってくれることを整理します。
AWSが提供しているのは、
- コンピューティング(計算する力)
- ストレージ(データを置く場所)
- ネットワーク(つなぐ仕組み)
- セキュリティ(守るための基盤)
といった ITインフラの機能です。
言い換えると、
ITを「使える状態」にするところまで
が、AWSの役割。
AWSが「やってくれないこと」
一方で、
AWSがやってくれないこともはっきりしています。
AWSは、
- 業務をどう設計するか
- どんなシステム構成が最適か
- どう運用するか
といった 判断や設計 はしてくれません。
具体的には、
- 業務設計
- システム全体の設計
- 運用ルールの決定
- 使い方の最適化
これらはすべて、
利用者側(人・組織)の責任です。

「サーバーは消えた」のではなく「見えなくなっただけ」
クラウドやAWSの話になると、
よくこんな表現が出てきます。
「サーバーはいらなくなった」
これは、正確ではありません。
正しく言うなら、
サーバーは、消えたのではなく、見えなくなっただけ
AWSの裏側では、今も大量のサーバーが動いています。
ただ、
- 自分で買わなくていい
- 自分で管理しなくていい
という状態になっただけです。

IT営業の会話ではどう使うか
商談で、
「AWSを導入したい」
と言われたとき、営業が最初にやるべきことは明確です。
- AWSの機能説明
ではなく、 - どんな業務を支えたいのか
- 何が課題なのか
- どこまでAWSに任せたいのか
を整理すること。
AWSは、目的ではなく手段。
この順番を守れる営業は、「AWSを売る人」ではなく「システムの話を整理できる人」として信頼されます。

この知識の立ち位置
この記事は「AWSを詳しく知るため」ではなく、「AWSに期待していいこと・いけないことを切り分けるため」の記事です。
AWSは、
クラウドという考え方をITインフラとして実装した部品の集合体
完成品ではありません。
この前提が腹落ちすると、
- AWSに振り回されない
- 無理な期待をしない
- 次の「比較」「判断」の話に進める
ようになります。
次の記事では、この理解を踏まえて「オンプレミスとAWSは何がどう違うのか」を、判断軸の話として整理していきます。
ここまで来たら、AWSはもう「魔法の箱」ではありません。

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